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熱電対(サーモカップル)と熱電堆(サーモパイル)

異種金属線の両端を接続し, その接点間に温度差を与えると 熱起電流を生じる(図3.1-(a))。 これをゼーベック効果と言う。

逆に,異種金属のループに電流を流すと熱放出と熱吸収が起こり 金属に熱流を生じる現象をペルチェ効果という。

また, 両端を接続した金属線の 一方の金属を切断すると その間に 電位差(熱起電力)を生じる(図3.1-(b))。 この効果を利用して 起電力の大きさから 接点間の温度差を測定するためのセンサを 熱電対という(JIS C1602-1981)。 この金属には,

  1. 金属の熱的,化学的安定度が大きい。
  2. 金属の機械的性質が大きい。
  3. 起電力が大きい。
  4. 直線性がよい。
  5. バラツキが少ない。
  6. 安価である。
という要求がある。

表 3.1: 熱電対の種類と測定範囲,最大起電力
対象 効        果 変 換 現 象
旧型 +金属 -金属 測温範囲 最大起電力 mV 等級
B - PtRh30% PtRh6% 0〜1800 13.6 0.5
R - PtRh13% Pt -10〜1680 20.7 0.25
- PR PtRh12.8% Pt -10〜1680 20.7 0.25
S - PtRh10% - -10〜1700 17.9 0.25
K CA クロメル
(Cr:10% Ni:90%)
アルメル
(Al,Mg,Si,rNi)
-250〜1350 54.2 0.4
E CRC クロメル コンスタンタン
(Cu:55%,Ni:45%)
-250〜950 72.8 0.4
J IC Iron コンスタンタン -200〜1150 69.8 0.4
T CC Cu コンスタンタン -250〜380 20.2 0.4
- WRe5-26 W-Re5% W-Re26% 0〜2480 36.8 -
- WRe3-25 W-Re3% W-Re25% 0〜2400 39.5 -
- IrRh40 Ir Ir-Rh40% 1100〜2000 20.2 -
- IrRh50 Ir Ir-Rh50% 1100〜2000 20.2 -
- CuAu Cu Au-Co2.11% 4〜100K - -
- CrAu Ni-Cr Au-Fe0.07% 1〜300K - -
- AgAu Ag-Au0.37% Au-Fe0.07% 4〜20K - -

図 3.1: 熱電対の原理

\begin{picture}(120,57)(0,5)
\put(28,8)
{\makebox(0,0){$\Delta E = E_{m\!f_{BA...
...{AB}}(T_2)$}}
\put(0,0){\includegraphics{./TgifFigs/TcBasic.eps}}
\end{picture}

ある温度での2つの金属の間の起電力差 (熱電能という)は 電子の易動度で決まる金属固有の値である。 A B 二種類の金属の温度T での熱起電力(熱電能)を $E_{mf_{AB}}(T)\/$とすると,

\begin{eqnarray*}
E_{mf_{AB}}(T)+E_{mf_{BA}}(T) & = & 0\\
E_{mf_{AB}}(T_1)+E_{mf_{BA}}(T_2) & = & \Delta E_{mf}
\end{eqnarray*}

が図3.1-(b)に対応する。 図3.1-(c)のようにこの A B 金属間に第3の金属 C を入れると,

\begin{displaymath}
E_{mf_{AC}}(T_1)+E_{mf_{CB}}(T_1) = E_{mf_{AB}}(T_1)
\end{displaymath}

という関係が成り立つので,A−C, C−B それぞれの接点の温度が等しければ, この第3の金属の影響はなくなる。

このため, 接点温度が異なる場合にはその差がそれほど大きくなければ 温度の差の1/2程度の誤差をもつ。 つまり,A−C, C−Bそれぞれの温度の平均値に近い値を示す。 このため 低温であるならばバンダ球や 熔融金属の中に2つの線を入れても,計測自体には問題がないことになる。 また多点切替えでは一方の線を共有して,接 点や基準冷接点の点数を減じる方法もとられる。

熱電対は高温や, 極低温で用いられることが多く,耐熱性や低温脆性のない性質を持ち、 耐酸性や耐アルカリ性をもつ科学的にも物理的にも安定した Pt, Re, W, Ag, Au といった貴金属を用いる。 このため,すべての配線をこの素材で行なうと極めて高価となる。 そこで, 感温部のみにこれらの貴金属を用い, 常温付近である配線用の部分には, 廉価な金属で これらの貴金属と同じ熱電能を持った合金線 (補償導線) を用いることができ, そのため,高価な金属を測温部のみとすることができる。

この安価な補償導線を用いて計測器まで配線する。 この補償導線は JIS C1610 に定められている(図3.2)。

図 3.2: 熱電対の接続方法
\includegraphics{./TgifFigs/TCconnect.eps}

熱電対の測温部分は,温度の計測要求に応じて,接触型・非接触型で用いる。 また,細い熱電対を保護するため 熱電対保護管を用いる。 この保護管には, 金属(銅,ステンレス,カンタル,インコネル,チタン,ハステロイ), 非金属(硬質硝子,高純度アルミナ,石英,ジルコニア,窒化珪素,テフロン) などが用いられる。 金属保護管に酸化マグネシウムやシリカ粉末で充填した構造のものを シース熱電対といい 0.5mm 太さ程度のものまである(図3.3)。

sheathTC
図 3.3: 熱電対の種類

熱電対は金属線であるが, 比電気抵抗の高い金属や細線を用いるために 起電力に対して素線の抵抗が大きくなり, 高々数100Ωの低インピーダンスでありながら 微小な電流が大きな誤差を持つ高比インピーダンス出力素子と見なす必要がある。 そのため, ノイズやアンプのドレン 3.1, ドリフト3.2が問題になるので, 扱いには十分な注意を必要とする。

熱電対の起電力は E,J,T という種類を除いて 非線形性が強いため、 起電力から温度を換算するには 折れ線近似・べき級数近似という アナログ演算リニアライザを使用することがあり, デジタル計算機を用いて,起電力の温度換算を行なうこともある。

また, 計測・計装機器メーカ(Analog-Device 社など)から リニアライザ,冷接点補償器内蔵の熱電対専用ICも市販されており, 比較的容易に入手できる。



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Ken Kishimoto 平成19年3月18日