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有線式測温体の誤差と補償方法

熱電対やサーミスタでの温度測定は対象の温度を測定しているのではなく、 熱電対やサーミスタの感温部の温度が対象物の温度に等しいと

熱電対やサーミスタの感温部では 次のような式が成り立つ。 感温部では図3.9に示す熱の出入りがある。

\begin{displaymath}
\rho cV\dif{T}{t}
=S_1h(T_g-T)
-S_1F\sigma(T^4-T_s^4)
-S_2\lambda\pdif{T}{x}-q_{loss}
\end{displaymath} (3.11)

ここで、 $\rho$,$c$,$V$はそれぞれ温接点部の密度,比熱,体積であり、 $h$は感温部の表面と周囲との熱伝達率、 $\lambda$は接点脚の熱伝導率、 $F$は形態係数で放射率を含み、 $\sigma$はステファンボルツマン係数、 $\partial T/\partial x$は接点脚の温度勾配である。 右辺第1項はガスと感温部の対流伝熱、 第2項は導線中の温度勾配による熱伝導、 第3項は放射伝熱量、第4項 $q_{loss}$は 表面に伝わった熱が保護管や熱コンパウンドを伝わり 温接点までに到達するまでにロスする熱量で、 $S_1$,$S_2$はそれぞれ感温部の表面積と接点脚の断面積である。
  1. 対流伝熱         右辺第1項 $S_1h(T_g-T)$
  2. 放射伝熱         右辺第2項 $S_1F\sigma(T^4-T_s^4)$
  3. 導線の熱伝導    右辺第3項 $S_2\lambda\pdif{T}{x}$
  4. 表面反応伝熱    右辺第4項 $q_{loss}$
である。この中でもっとも大きなものは対流と放射である。

図 3.9: 感温部詳細
\includegraphics[scale=0.8]{Figs/hottop.eps}

この式を用いて、 非定常な温度の計測も行なう。 式(3.11)を変形すると、

\begin{displaymath}
T_g = T + \tau\dif{T}{t}
% +\frac{\lambda S_2}{hS_1}\dif{T}{x}
+\frac{F\sigma}{h}(T^4-T_s^4) + \frac{q_{loss}}{hS_1}
\end{displaymath} (3.12)

である。 右辺第3項は素線内の温度勾配による誤差であるが、 図3.10のように、 多くの場合、熱電対の配置の方法で避けることのできる場合がある。

右辺第4項は熱放射の影響であるが、500K以下ではほとんど問題にならない。 しかし、 600K 以上では大きな影響となる場合があり考慮を必要とする。

図 3.10: 誤差を避けるための感温部の配置
\includegraphics[scale=0.75]{Figs/tc_locate.eps}

3.10で(A)は、 接点脚が気流の温度分布勾配の大きな部分を横断しているので (B)よりも誤差となりやすい。 固体表面を測る場合の(C)では、 金属製の接点脚はフィン効果を持つため、固体からの熱放出を促進している。 そのため、温接点付近は接点脚の影響を受けている。 金属表面近くに接点脚を這わせることで 素線に沿った温度勾配を小さくして、熱伝導損失を低下させ 誤差を回避できる。 右辺第5項は、反応性の気体や液体の温度を測定するとき、 熱電対を構成する白金のような金属が触媒効果を持ち、表面で 化学反応があると、誤差となる。 金属表面に薄いコーティングを施して反応を抑制する。

右辺第2項は、熱慣性項であり、時定数 $\tau=(\rho c V)/(hS_1)$である。 熱伝達率$h$は、式(3.13)を用いて、 時系列として測定した温度から演算によって実際の温度$T_g$を算出できる。

応答周波数は、 熱電対を直径$D $の微小な球とした場合は

\begin{displaymath}
\mbox{Nu} = \left\{
\begin{array}{l@{\qquad}l}
2 + 0.57 \...
...1/3}
& \mbox{Re} = 500 \sim 150000 \\
\end{array} \right.
\end{displaymath} (3.13)

で計算し、 熱電対を直径$D $の微小な円柱とした場合は
\begin{displaymath}
\mbox{Nu} = \left\{
\begin{array}{l@{\qquad}l}
0.75 \mbox{...
...r}^{0.37}
& \mbox{Re} = 40 \sim 1000 \\
\end{array} \right.
\end{displaymath} (3.14)

となる。これより、 図3.11を得ることができる. ガス温度よりも熱電対の形状の影響の大きいことが判定できる.
図 3.11: 空気の流速10m/sでのR熱電対の応答周波数 Hz
$h = \mbox{Nu}\lambda/D$ で熱伝導率$\lambda$から熱伝達率を求めると、 式(3.12)で実際の温度を求めることができる。 しかし、この$\mbox{Nu}$を求める式は経験式であり、 かなり大きな誤差をもつ。式(3.12)の 時定数$\tau$の推定誤差が そのまま測定値に対する誤差になるので 図3.12のように 1対の太さの異なる熱電対を接近して用い、 時定数を未知数として温度と同時に解く方法[3]も試みられている。

1対の太さの異なる熱電対では

\begin{displaymath}
% \rule[-3ex]{0pt}{5ex}% array の行間制御パラメー..
...+\tau_1\dif{T_1}{t}, \qquad
T_{g_2} = T_2+\tau_2\dif{T_2}{t}
\end{displaymath} (3.15)

である。
図 3.12: ダブル熱電対
図 3.13: 熱電対の出力
\includegraphics[scale=0.44]{Figs/twoTC.eps}

図 3.14: 式(3.16)による熱電対の出力
図 3.15: 熱電対の出力
直径が 30$\mu$m と56$\mu$m の2つの円柱形状のR熱電対とともに、 応答性のよい 3.1$\mu$m のタングステン細線(5m/s 空気流中で約15kHz)を 図3.12のように 約450Kと常温の空気が交互に流れる乱流混合層中において測定した結果である。 この3つのセンサーの出力は 図3.13のようになる。 この冷線の時定数は約0.43ms であり、補正していない結果を示している。 非常に細い熱電対でさえ、 冷線に比べて大きな時定数(遅れ)を持ち、 高温空気と低温空気の乱流混合場における 温度変動に忠実な追従できず 遅れを生じている。

2つの熱電対の間隔は数$\mu$mであるので、 同じ場所の気体の温度を測定しており、 お互いの放射の影響が少ないと仮定すると $T_{g_1}=T_{g_2}$である。 また式(3.14)から $\mbox{Re} = 40$ のオーダーでは、 熱伝達率が熱電対直径の 0.4乗に比例するので、 $
a = \frac{\tau_2}{\tau_1} = \left(\frac{D_2}{D_1}\right)^{0.4}
$ とすると、

\begin{displaymath}
\tau_1 = (T_2-T_1)\frac{\Delta t}{\Delta(T_1-a T_2)}
\end{displaymath}

であるので、$\Delta$ を短い時間$\delta t$ での変化と表すと、
\begin{displaymath}
T_g = T_1 - \overline{\left(\frac{\tau_1}{\Delta t}\right)}\dif{T_1}{t}
\end{displaymath} (3.16)

として、 差分形式であるが刻々の時刻の温度を時定数を仮定する事なく求めることができる。 時定数の計算結果はノイズの影響を受けるために 時定数 $\tau_{old}^{*}$は指数平均 $\tau_{old}^{*} = 0.7\tau_{old} + 0.3\tau_{new}$として用いる。 こうして求めた温度は 図3.14に示すようになる。

また、オンラインではないが、 適切な時定数を2つ用意すると式(3.15)から 応答補償後の2つの波形 vが等しくなることを利用して2つの時定数を求める 文献[3]の方法ではより瞬間的な温度を測定することができる。


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Ken Kishimoto 2014-06-02