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有線式測温体の誤差と補償方法

熱電対やサーミスタの感温部では図3.8のよう な熱の出入りがあるので、次のような式が成り立つ。
\begin{displaymath}
\rho cV\dif{T}{t}
=hS_1(T_g-T)
+S_1F\sigma(T^4-T_s^4)
-S_2\lambda\pdif{T}{x}-q_{loss}
\end{displaymath} (3.3)

ここで、ρ, c, V はそれぞれ温接点部の密度,比熱,体積であり、 h は感温部の表面と周囲との熱伝達率、 λ は接点脚の熱伝導率、 Fは形態係数で放射率を含み、 σはステファンボルツマン係数、 $\partial T/\partial x$は接点脚の温度勾配である。 右辺第1項はガスと感温部の対流伝熱、 第2項は導線中の温度勾配による熱伝導、 第3項は放射伝熱量、第4項 $q_{loss}$は 表面に伝わった熱が保護管や熱コンパウンドを伝わり 温接点までに到達するまでにロスする熱量で、 $S_1$,$S_2$はそれぞれ感温部の表面積と接点脚の断面積である。

この式を用いて、 非定常な温度の計測も行なう。 式(3.4)を変形すると、

\begin{displaymath}
T_g = T + \tau\dif{T}{t}+\frac{\lambda S_2}{hS_1}\dif{T}{x}
+ \frac{F\sigma}{h}(T^4-T_s^4) + \frac{q_{loss}}{hS_1}
\end{displaymath} (3.4)

である。 右辺第3項は素線内の温度勾配による誤差であるが、 多くの場合、熱電対の配置の方法で避けることのできる場合がある。

図 3.8: 感温部詳細
HOTTOP

右辺第4項は熱放射の影響であるが、500K以下ではほとんど問題にならない。 しかし、 600K 以上では大きな影響となる場合があり考慮を必要とする。

右辺第5項は構造上の問題であるが 測定対象と熱電対の距離をできるだけ近くして無視できるように取り扱う。

右辺第2項は、熱慣性項であり、時定数 $\tau=(\rho c V)/(hS_1)$である。 熱伝達率h は、式(3.6)を用いて、 時系列として測定した温度から演算によって実際の温度$T_g$を算出できる。

応答周波数は、 熱電対を直径D の微小な球とした場合は

\begin{displaymath}
\mbox{Nu} = \left\{
\begin{array}{l@{\qquad}l}
2 + 0.57 \...
...1/3}
& \mbox{Re} = 500 \sim 150000 \\
\end{array} \right.
\end{displaymath} (3.5)

で計算し、熱電対を直径D の微小な円柱とした場合は
\begin{displaymath}
\mbox{Nu} = \left\{
\begin{array}{l@{\qquad}l}
0.920 \mbo...
...}^{1/3}
& \mbox{Re} = 40 \sim 4000 \\
\end{array} \right.
\end{displaymath} (3.6)

となる。

次のような図を得ることができる. ガス温度よりも熱電対の形状の影響の大きいことが判定できる.

図 3.9: 流速10m/sでのR熱電対の応答周波数 Hz

$h = \mbox{Nu}\lambda/D$ で熱伝導率λから熱伝達率を求めると、 式(3.5)で実際の温度を求めることができる。

しかし、この Nu を求める式は経験式であり、 かなり大きな誤差をもつ。式(3.5)の 時定数τ の推定誤差が そのまま測定値に対する誤差になるので 図3.10のように 1対の太さの異なる熱電対を接近して用い、 時定数を未知数として温度と同時に解く方法[3]も試みられている。

1対の太さの異なる熱電対では

\begin{displaymath}
% \rule[-3ex]{0pt}{5ex}% array の行間制御パラメータがわから...
...+\tau_1\dif{T_1}{t}, \qquad
T_{g_2} = T_2+\tau_2\dif{T_2}{t}
\end{displaymath} (3.7)

である。
図 3.10:ダブル熱電対
TgifFigs/twoTC
図 3.11: 熱電対の出力
tccompens1
図 3.12: 式(3.9)による熱電対の出力
tccompens3
図 3.13: 熱電対の出力
tccompens2

直径が 30μm と50μm の2つの円柱形状のR熱電対とともに、 応答性のよい 3μm のタングステン細線(5m/s 空気流中で約15kHz)を 図3.10のように同じ場所において測定したものである。 この3つのセンサーの出力は 図3.11のようになり、 細線熱電対でさえ高温空気と低温空気の乱流混合場においては 遅れを生じている。

同じ場所の気体の温度を測定していると仮定すると $T_{g_1}=T_{g_2}$である。 また Re=40 のオーダーでは、 熱伝達率が熱電対直径の 0.4乗に比例するので、 $
a = \frac{\tau_1}{\tau_2} = \left(\frac{D_1}{D_2}\right)^{0.4}
$ とすると、

\begin{displaymath}
\tau_1 = (T_2-T_1)\frac{\Delta t}{\Delta(T_1-a T_2)}
\end{displaymath}

であるので、Δ を短い時間δt での変化と表すと、
\begin{displaymath}
T_g = T_1 - \overline{\left(\frac{\tau_1}{\Delta t}\right)}\dif{T_1}{t}
\end{displaymath} (3.8)
として、 差分形式であるが刻々の時刻の温度を時定数を仮定する事なく求めることができる。 時定数の平均には指数平均を用いる。こうして求めた温度は 図3.12に示すようになる。オンラインではないが、 適切な時定数を2つ用意すると式(3.8)から 応答補償後の2つの波形 が等しくなることを利用して2つの時定数を求める 文献[3]の方法ではより瞬間的な温度を測定することができる。



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Ken Kishimoto 平成19年3月18日