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竜宮丸 大忙し!   From: "Mitsui"
1998/10/08 15:00:32
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竜宮丸 大忙し!
 

その日は朝から曲データのチェックをしていた。この三日間ずっと制作に追われてカンヅメ幽閉状態。与論で暮らす間は勘弁してほしいものだが自称「デジタル自給自足人」だから仕方ない。「デジタルアーティスト」と大声で叫びたいところだが経理、営業でさえ一人芝居のシナリオにあるのだからまさに「孤島人」だ。

衛星放送の芸能チャンネルを見ていたら「スクープ」だの「衝撃」だのと騒いでいる。またいつものゴシップネタかと思うと「南の島 与論島にUFO墜落!!!」キャスターはクソ真面目に喋っている。

中継に切り替わるといつもの景色が写し出されている。ヨットハーバーもテレビで見ると立派なものだ。リポーターがマイクを向けるその相手は、、イサナだ!

その夜、イサナがやって来た。「三井さん! 明日から竜宮丸を出してくれよ!」、、その後、説明は続いた、、。

翌日、グラスボート竜宮丸は大忙しになった。全国民放の取材陣、芸能雑誌、スポーツ新聞社、、オカルト雑誌、ついでに新興宗教団体。

ここでグラスボートというものを少し説明しておこう。

かつてスクーバダイビングなどが一般的でなかった頃、遊覧船の船底をガラス張りにして海中を見せていた。15名も乗船すれば沈みそうな小船、、おまけに重油だから臭い!うるさい!遅い!、、30年も前には島に100隻ちかくあった。

取材陣は必死でガラス越しにUFOの残骸があるという水中を覗いている。イサナは深夜、流星のような光がこの海域に落ちたこと、そして残骸らしきものが沈んでいるのを確認したことを真剣に話している。私は笑いを必死でこらえて舵を取っていた。

都会と違い与論の海では、水深20メートルの海底をガラス越しになんとか確認できる。ほんとうにかすかに微妙に、、、TVカメラも必死だ。

やがて高性能水中デジタルビデオカメラを用意した潜水取材チームがやってきた。そして島の観光課との間で押し問答が始まった。

「自然保護地域のため潜水は許可できません」
「我々はプロです!決して珊瑚を傷つけるようなことは無い」
「一社に認めると殺到してしまいます」
「そこをなんとか、、美しい珊瑚が全国に放映されれば観光にメリットでしょう」
「駄目です!UFOなど空想の産物です」
「墜落を確認した、、というのは全世界で大騒ぎですよ」
「与論町観光課では確認していません」

潜水禁止の立て看板前で延々と続く、、野次馬が周りを囲んでいる。

島の子供たち
島のおばさん
島の道路工事人
島のダイビングショップスタッフ
島のホテル支配人
島の海洋開発関連会社 社員

みんな白けた顔で去っていった。

連日、竜宮丸は大忙し、、イサナはその後、悪乗りして素潜りで海中からゴミを拾らってきた。得体の知れないガラス片、、金属片、、プラスチック片。それらが取材料にプラスアップされる。一つゴミを海底からもって上がると¥50000! イサナと私は笑いが止まらない。水深20メートルへの素潜りは島民の中ではイサナしか出来ない。まれによそ者が素潜りしようとするが観光課はそれさえも制止する。あたりまえだ、、イサナだけは「嘘」を通し続けるから、、、。

華厳教総本山住職は教祖を連れてやってきた。

「君がイサナちゃんか、、!」生前、父上とは親友だったとか続けている。私はここの教祖を雑誌で知っていた。ノストラダムス騒ぎが終わったあと「人類滅亡を救ったのは我が霊力 宇宙の彼方とコンタクトを取った」などとのたまっている。それでも結構、信者は増えているらしい。

「やれやれ、、親父はとんでもない知り合いばかりだな」、、イサナはため息ついた。

その後、世界中の研究機関から「回収したサンプルを分けてほしい」とイサナにEメールが殺到した。英語の達者なイサナは返事をそえて「金属片」を郵送した。粗大ゴミ置き場から拾って来たアルミの鍋、やかん、を2センチ四方に切って細めに、、。

その後、分析の結果「ニセモノだった」と発表した話しは未だに聞かない。